精神疾患のある従業員の解雇はできるのか?

精神疾患のある従業員の解雇

Q

当社には、うつ病を患っている従業員がいます。遅刻や早退が多く欠勤することもあり、周囲の人間の業務負担が増加しています。
既に、2年間もこのような状況が続いていることから、会社としては、本人に退職をしてもらいたいと考えています。

 

A

まず、会社として、本人の主治医や産業医から診断書をとることにより、本人の病状を正確に把握することが必要です。そのうえで、必要があれば会社の休職制度等により休職をさせ、復職を待つなどの措置を講じる必要があります。
また、復職の際には「復職に関する合意書」等を締結することにより、その後の対応について合意をしておくなどの措置も必要です。

この様な対応には注意!!

 会社側が、十分な配慮なく、また本人や家族等との話し合いを行わないで退職を勧奨したり、休職期間満了の取り扱いを含め普通解雇することとなった場合には、紛争が生じる可能性が高く、当該解雇が無効とされるリスクがあります。

解説

トラブルになる理由、ポイント

 精神疾患を患っていることをもって、直ちに「労働契約を継続しがたいやむを得ない事由」にあたるものと判断し、会社側から退職を勧奨したり、普通解雇することとなった場合、本人の勤務状況等が「労働契約を継続しがたいやむを得ない事由」に該当するか否かについての紛争が生じることとなります。

解決例

 このような事例において、会社が当初から従業員を退職させようとする姿勢を見せた場合には、従業員やその家族も感情的になりトラブルを大きくしてしまうことが多く見受けられます。会社側としては、本人の回復・治癒及び復職に向けてできるだけの対応を行うという姿勢が必要であると考えられます。

 会社の事前の準備としては、就業規則等の休職規定において「復職後一定期間内に再発した場合には休職期間を通算する。」旨及び「休職期間の満了までに復職できない場合には自然退職とする。」旨を規定しておくことが必要です。

 そのうえで復職後に万一再発し、休職期間の満了までに復職ができないような場合にも、できるだけ本人や家族と十分な話し合いを持ったうえで、円満な退職に合意できるようにすべきでしょう。

留意点

 特に精神疾患の場合においては、「回復の可能性がない」旨の医師の所見が出ることはほぼあり得ないことから、回復の可能性がある中で休職期間の満了によって自然退職となった場合においても、争いになれば普通解雇と判断され、「労働契約を継続しがたいやむを得ない事由」に該当しないものと判断されて無効となるリスクがあることに留意すべきです。