従業員を休職をさせる時は注意が必要

 

 坂本工業では私傷病により休みがちな従業員がおり、先日、木戸部長に1ヵ月休職したいという申し出があった。このようなケースは初めてのことであったため、社労士に相談することにした。

 先生、こんにちは。さっそくですが、休職について相談にのってください。

 はい。従業員から休職の申し出があったということでしたが、状況を詳しく教えていただけますか?

 この従業員は入社6年目で、製造部に所属しています。5月後半から休みがちになり、5月に6日、6月に7日、7月に8日欠勤している状況になっています。先日、この従業員から1ヶ月間休職したいという申し出があり、どのように対応すべきか困っています。

 なるほど。まず大前提からお話すると休職とは、従業員本人の申し出に基づいて取得させるものではなく、欠勤が続くなどの状況があり、会社が休職を必要と判断した場合に、従業員に対して命じるものとなります。

 会社が判断して休職させるということですね。従業員から休職の申し出があれば、そのまま休職させなければならないものだと思っていました。

 そのように認識されている方は多くいらっしゃいますね。従業員を休職させるかを会社が判断し命じる理由は、そもそも休職制度が労働基準法等の法令で義務づけられている制度ではなく、会社が任意に設けているものだからです。

 任意の制度とはいえ、多くの企業で休職制度を設けているのはなぜでしょうか。

 風邪で数日間欠勤するような場合は、年次有給休暇を取得することなどで対応できますが、例えば長期間の入院が必要となると、付与された年次有給休暇の日数では足りず、従業員は欠勤をすることとなります。そもそも会社と従業員の間には労働契約があり、従業員はこの契約に基づき定められた所定労働日に労務の提供を行わなければなりません。したがって、欠勤により労務を提供するという労働契約を履行できない場合には、最終的には退職せざるを得ない状況となります。

 なるほど、そうですね。自ら退職を申し出るか、場合によっては解雇となることも考えられますね。

 一方で、会社にとってもやむを得ない事情により従業員が退職することは大きな損失であることから、休職制度が設けられているのです。一定期間について退職や解雇を猶予し、その間で療養に専念し、回復した上で職場に復帰することを想定したものになります。他の休職事由も似通った考え方ですね。

 なるほど。そのような趣旨に基づいて休職制度が設けられているのですね。それでは、今回の休職の申し出について、会社としてどのように判断すればよいのでしょうか。

 私傷病とのことですので、まず医師の診断書を提出してもらい、その内容を休職とするかの検討を行う必要があります。休職させる場合は会社から休職を命じることになりますが、その際にはなるべく休職辞令などの書面を交付しておくべきでしょう。検討する前提には、就業規則の休職事由に該当するのかということもありますので、休職の条項を確認しておいてください。

 わかりました。その他、休職に関してどのような点に注意が必要でしょうか?

 今回は休職させることについてのご相談でしたが、復職の取扱いについても注意が必要です。具体的には、復職できるかをどのように判断するのかといったことや、復職の手続きが就業規則に規定されているかといったことがあります。また、メンタルヘルス不調により休職となり、復職したものの再度の欠勤や休職するようなケースに対応できていないこともあります。この機会に確認し、必要があれば見直しをしておくことが望まれます。

 一度、就業規則を確認してみます。また見直しをする際には相談に乗ってください。