【働き方改革】注目されるフレックスタイム制の残業代の計算

 いよいよ4月より、働き方改革関連法のうち、年5日の年次有給休暇の取得義務化などの事項が施行されますが、フレックスタイム制についても改正が行われます。そこで今回は、働き方改革が求められる中で注目が高まっているフレックスタイム制について、その概要と改正点を解説します。

 フレックスタイム制とは、あらかじめ定められた総労働時間の中で、従業員に日々の始業・終業時刻の決定をゆだねて、働かせることができる制度です。通常の労働時間制度であれば、例えば始業が午前9時、終業が午後6時(途中休憩を1時間)の1日8時間労働のような形で、始業および終業時刻を固定的に定めますが、フレックスタイム制の場合、忙しい日については午前9時から午後8時まで10時間勤務し、比較的余裕がある日には午前11時から午後6時まで6時間勤務を行うなどして、従業員が柔軟に働くことが可能となります。

 フレックスタイム制では、従業員に始業および終業時刻の決定をゆだねる必要があります。一方で必ず勤務しなければならない時間帯であるコアタイムや、出社・退社を選択できる時間帯であるフレキシブルタイムを設けることが可能です。多くの従業員が参加する会議はコアタイムの中で設定したり、長時間労働を防ぐためにフレキシブルタイムをうまく利用することが考えられます。

 

 通常の労働時間制度においては法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合に時間外労働となりますが、フレックスタイム制の場合、1日もしくは週の法定労働時間を超えたとしてもただちに時間外労働とはなりません。清算期間と呼ばれるフレックスタイム制として区切った期間に応じた暦の日数で、法定労働時間の総枠が決まり、この時間を超えた場合に、時間外労働となります。

 そのため、[1]の事例で挙げた10時間勤務の場合でも、この日について考えると時間外労働とはならず、1ヶ月を合計して法定労働時間の総枠を超えた部分が、時間外労働として割増賃金の支払いが発生するという取扱いになります。

 

 

1.清算期間の延長

 これまでフレックスタイム制は清算期間の上限が1ヶ月までとなっていましたが、法改正によりこれが3ヶ月に延長され、より柔軟に労働時間を調整することが可能になりました。例えば4月が繁忙期で6月が閑散期の場合、4月は法定労働時間の総枠を超えて働く一方、6月は4月の法定労働時間の総枠を超えた分だけ減らして働くことが可能となり、割増賃金の取扱いについても変わります。イメージとしては下図のとおりとなります。(図はクリックすると拡大されます。)

 

 

 

 

 なお、清算期間が1ヶ月を超える場合であっても、繁忙期に偏った労働時間とすることはできないため、以下の2つの要件を満たす必要があり、どちらかを超えた場合は時間外労働となります。

 

(1)清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えないこと

(2)1ヶ月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないこと

 
 

 

 また、時間外労働となる場合の割増賃金の取扱いは複雑なため、この清算期間を3ヶ月とする制度の導入を検討される場合は、厚生労働省のリーフレット等をご確認ください。

 

2.労使協定の届出

 フレックスタイム制は労使協定を締結して行いますが、清算期間の上限が3ヶ月に延長されたことに伴い清算期間が1ヶ月を超える場合、労使協定を所轄労働基準監督署へ届け出る必要があります。なお、従前どおり清算期間を1ヶ月以内とすることも可能であり、清算期間の長さによって、届出の要否が異なることになります。

 

3.完全週休2日制の事業場における取扱い

 これまで、完全週休2日制の事業場であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまい、時間外労働のない働き方をした場合であっても、時間外労働が発生することがありました。例えば清算期間の暦の日数が30日の月で所定労働時間が8時間、所定労働日数が22日(完全週休2日で8日の所定休日)であった場合、総労働時間は176時間となりますが、法定労働時間の総枠は171.4時間であり、総労働時間を働いたときであっても、5.6時間については時間外労働となりました。

 この取扱いが今回の改正により、労使協定を締結することにより、週の所定労働日数が5日(完全週休2日)の労働者を対象に、法定労働時間の総枠を清算期間内の所定労働日数に8時間を乗じた時間数を労働時間の限度とすることが可能となりました。上記の場合、所定労働時間を176時間としても、労使協定を締結していれば、時間外労働は発生しないことになります。

 

 

 

 

 

 今回の改正により、より柔軟にフレックスタイム制を活用することが可能となり、育児や介護、病気の治療等と仕事との両立だけでなく、従業員のより効率的な働き方のひとつとして活用が考えられます。フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

■参考リンク

厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」

https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。