厚生省のホームページで企業名が公表される労働基準法等の違反

 過労死等ゼロを目指す取組みの強化の一つとして、労働基準関係法令違反に係る公表事案が厚生労働省および都道府県労働局のホームページに一定期間掲載されることになっています。そこで今回の特集では、公表される事案の基準と労働基準法・最低賃金法違反の公表事案をとり上げます。

 ホームページに掲載される事案は、労働基準関係法令違反の疑いで送検、公表された事案(送検事案)や、厚生労働省が企業名を公表するとして示された通達に基づき、都道府県労働局長が企業の経営トップに対し指導し、その旨が公表された事案(局長指導事案)です。
 掲載期間は公表日から概ね1年間で、公表日から1年が経過し、最初に到来する月末にホームページから削除されます。また、公表日から概ね1年以内であっても、送検事案は、ホームページに掲載を続ける必要性がなくなったと認められる場合、局長指導事案は、是正および改善が確認された場合に速やかにホームページから削除されることになっています。

 2020年8月1日から2021年7月31日までに公表されたもので、労働基準法・最低賃金法違反に係る事案としては以下のようなものがあります。

[最低賃金法第4条違反]
 労働者9名に対し5ヶ月間、地域別の最低賃金以上の賃金を支払わなかった
[労働基準法第15条違反]
 労働者2名に、労働契約の締結の際に労働条件を、書面を交付する等により明示しなかった
[労働基準法第32条違反]
 労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせた
[労働基準法第36条違反]
 外国人技能実習生5人に1ヶ月100時間を超える違法な時間外・休日労働を行わせた
[労働基準法第37条違反]
 労働者4名に対し、4ヶ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金合計約37万円を支払わなかった
[労働基準法第39条違反
 労働者6名に、年5日以上の年次有給休暇を取得させなかった
[労働基準法第75条違反]
 業務上負傷した労働者に、労災保険を使用させず、健康保険を使用し、治療費を全額負担しなかった
[労働基準法第104条の2違反]
 労働基準監督署長による報告命令に対し、虚偽の事実が記載された書類を提出し、虚偽の報告を行った

 このように内容は多岐にわたっており、36協定の提出や割増賃金の支払いとった基本的な事項は当然として、その内容やそもそもの労働時間の管理まで細かく監督指導が行われるようになっています。

 これらの公表事案の内容を踏まえ、チェック項目をまとめてみると以下のようになります。この機会に問題がないか確認しましょう。

  • 10月より改定される地域別の最低賃金を下回っていないか
  • 雇入れ時や契約更新の際に、労働条件通知書を交付しているか
  • 36協定の延長時間を超えて、時間外労働を行っていないか
  • 時間外労働の上限規制(時間)を遵守しているか
  • 従業員が時間外労働、休日労働、深夜労働を行った場合、これらに対する割増賃金を支払っているか
  • 年5日以上の年次有給休暇を取得させる必要がある従業員について、必ず取得させているか
  • 業務上負傷した従業員について、労災保険を使用しているか。健康保険を使用させていないか
 

 働き方改革で年次有給休暇の取得義務化や、時間外労働の上限規制に係る法改正が施行され、より一層、労務管理の重要性が高まってきています。また、公表事案の事例からわかるように、様々な面において監督指導が行われています。労務管理上の課題の洗い出しや解決をしていく中で、お困りごとがございましたら、当事務所までご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「長時間労働削減に向けた取組」
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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