サービスの背景と目的

人的資本経営の核心としての労働環境

現代の企業経営において、従業員のメンタルヘルスと労働環境の質は、
単なる福利厚生の範疇を超え、企業の存続と成長を左右する戦略的資産として認識されています。
環境・社会・ガバナンスの投資の潮流や「健康経営」への関心の高まりは、
企業に対し、従業員が心身ともに健全に働ける環境の整備を強く求めています。

しかしながら、組織内部の力学は往々にして不透明であり、ハラスメントや過重労働といった問題は、顕在化するまで潜伏する傾向にあります。
特に、内部の相談体制が脆弱、あるいは機能不全に陥っている場合、従業員は自身の抱える問題や不安を組織と共有することを躊躇します。
この「沈黙」は、個人のメンタルヘルス不調を引き起こすだけでなく、組織全体の生産性低下、
離職率の増加、さらには訴訟リスクやブランド毀損といった深刻な経営リスクへと直結します。

「沈黙」のコストと外部窓口の必要性

リクルートマネジメントソリューションズ等の調査によれば、心理的安全性の欠如はチームのパフォーマンスを著しく低下させることが示唆されています 

従業員が「この組織では安心して発言できない」と感じる状況下では、不正やハラスメントの予兆が見過ごされ、問題が修復不可能なレベルに達してから発覚するという最悪のシナリオを招きます。   

こうした背景から、「外部ハラスメント窓口」の導入は、従業員に対して「安心して相談できる聖域」を提供し、潜在的なリスクを早期に検知するための不可欠なガバナンス装置として位置づけられる。

 当法人でも2026年1月現在、4件の顧問先が外部ハラスメント窓口をご利用しています。

改正公益通報者保護法(2022年)

2022年6月に施行された改正公益通報者保護法は、企業のコンプライアンス体制に劇的な変革をもたらした。本改正の核心は、内部通報体制の整備を企業に義務付けた点にある。

法的要件 内容 対象企業
体制整備義務 内部通報に適切に対応するための窓口設置、調査、是正措置の仕組みを構築する義務。 従業員数301人以上の企業(300人以下は努力義務)
守秘義務 内部通報対応業務に従事する者(従事者)に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け。 全企業
刑事罰の導入 正当な理由なく守秘義務に違反した場合、30万円以下の罰金(刑事罰)が科される。 従事者個人
外部委託の許容 内部通報窓口の設置は、社内の部署に限らず、外部の法律事務所や社労士法人への委託が可能。 全企業

 

この法的枠組みにおいて、外部委託された窓口担当者は、法的な「従事者」として指定されています。
これは単なるアウトソーシングではなく、法的責任を伴う厳格な役割分担です。

外部窓口担当者が刑事罰の対象となることは、逆説的に言えば、通報者に対して極めて高いレベルの秘密保持が担保されていることを意味し、これが従業員の安心感醸成に直結します。

安全配慮義務とハラスメント防止法

労働契約法第5条が定める「安全配慮義務」は、物理的な安全性のみならず、メンタルヘルスを含む心身の健康への配慮を企業に求めています。
また、労働施策総合推進法の改正(通称パワハラ防止法)により、中小企業を含む全企業に対し、ハラスメント防止措置が義務化されました。

内部通報窓口がハラスメント相談窓口を兼ねることは、運用の効率化において合理的であり、法的にも許容されています。
重要なのは、「相談先がある」という事実が、企業の法的防御力を高めると同時に、従業員に対する安全配慮義務の具体的な履行証明となる点であることです。

「一次対応」に特化する意義

外部相談窓口の役割定義において最も重要なのは、その機能が「一次対応」に限定されているという点であります。
これはサービスの欠陥ではなく、中立性と客観性を維持するための意図的な設計です。

外部相談窓口の行動規範(一次対応の限界と役割):

行動指針 詳細な理由と目的
問題解決を目指さない 外部窓口はその場での即時解決(裁定や仲裁)を行わない。一方的な情報のみで判断を下すことは、公正な調査プロセスを阻害し、冤罪や誤認を生むリスクがあるためです。
認知変容を試みない 相談者の受け止め方(認知)を変えようとしたり、「気にしすぎだ」といった説得を行わない。相談者の主観的現実を尊重し、まずはその訴えをありのままに受け止めることが信頼関係の構築に不可欠です。
事実の重視 心情には深く共感しつつも、記録としては「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「何を(What)」行ったかという客観的事実(5W1H)の抽出を最優先します。これが後の調査の基礎となります。
サポートの限界 相談者に寄り添い信頼を得ることは必須だが、会社の人事権や指揮命令権を持たない外部窓口は、直接的な救済(異動させる等)を約束することはできません。この限界を明確に伝えることが、過度な期待による後のトラブルを防ぎます。

 

相談チャネルの多様性

相談のハードルを下げるため、複数のチャネルを用意し、各従業員の状況や心理状態に合わせたアクセスを可能にしています。

  1. Zoom(オンライン面談)

    • 特徴: 受付文書や資料を画面共有しながら話ができるため、事実関係の確認がスムーズです。

    • 心理的配慮(ビデオオフ): 相談者は「顔を見られたくない」「泣いている姿を見せたくない」という心理が働きます。
      そのため、相談者側のみ「ビデオオフ(カメラなし)」での通話が可能とされています。
      これにより、電話のような匿名性を保ちつつ、資料共有のメリットを享受できます。

  2. 電話

    • 特徴: デジタルツールに不慣れな従業員や、緊急性が高く即座に声を聴いてほしい場合に有効な伝統的手段。

  3. ご来所による対面

    • 特徴: メンタルケアの聴取が必要な場合に用いります。ニュアンスや非言語的な情報を直接確認できる利点があります。

相談対応の具体的ワークフローとガバナンス

 導入フェーズ:契約と周知

  1. 契約締結: 貴社と当法人で「外部ハラスメント相談窓口契約」を締結します。
    これには月額基本料金が発生し、継続的なサポート体制が確約されます 

  2. ハラスメント研修と周知: 制度導入時、管理職向けおよび一般職向けのハラスメント研修を実施します 
    この研修の場において、外部相談窓口の存在、利用方法、守秘義務について直接説明を行います。
       

    • 戦略的意義: 「会社は本気でハラスメント対策に取り組んでいる」というメッセージを従業員に発信し、窓口への信頼感を醸成します。

 運用フェーズ:予約からヒアリング

  1. 予約システム: 指定の予約フォームから従業員が直接予約を行います。

  2. 時間設定(50分): 1回の相談時間は「50分」と厳格に定められている。

    • 心理学的根拠: カウンセリングや相談において、時間の枠組み(枠構造)は重要です。
      無制限の時間は相談者を疲弊させ、話の焦点がぼやける原因となります。
      50分という区切りは、集中力を維持し、要点を整理するために最適な単位です。
      聞ききれない場合は、無理に延長せず次回の予約を設定します。

  3. ヒアリングの実施:

    • 事実関係の聴取: 独自の「受付票・チェックリスト」を使用し、5W1Hを漏れなく聴取します。

    • 心身の不調確認: 睡眠障害、食欲不振、メンタルヘルスの悪化がないかを確認します。

    • 希望対応の確認: 「どうしてほしいか」を確認する(例:記録のみ希望、調査希望、行為者への注意希望など)。

報告フェーズ:情報のコントロール権

情報の取り扱いにおける最大の原則は、「相談者の許可(コンセント)」です。

  • 第三者開示の原則: 相談内容を会社側(人事部や経営層)に報告する場合、必ず相談者の明確な許可を得ています。

  • 拒否権の保証: もし相談者が「会社には知られたくない(ただ聞いてほしかっただけ)」と判断した場合、貴社に対して相談内容の詳細は一切報告されません。

    • 統計報告: ただし、「〇月に1件の相談があった」という統計的な事実は共有される場合がありますが、個人が特定される情報は完全に遮断されます。
      この厳格な運用が、報復を恐れる従業員への最大の安心材料となります。

 利益相反管理の徹底:被害者ケアと企業防衛の分離

ハラスメント事案において最も繊細な問題が「利益相反」です。

会社と契約している社労士が、被害者(従業員)の味方をするのか、会社の味方をするのかという疑念は、制度の信頼性を根底から揺るがします。

当法人はこの課題に対し、役割の明確な分離によって対処しています。

1次対応は、産業カウンセラーによる被害者メンタルケア(ケア機能)

被害者の精神的救済のために、社労士業務とは切り離された純粋なカウンセリングサービスを提供します。

  • 委託産業カウンセラーの起用: 被害者のケアは、委託の産業カウンセラーが担当します。

  • 無料相談枠の提供: 心の傷が深刻な場合は、1人の被害者につき、2回までのメンタルケアを含む面談が無料で提供します。

  • 絶対的守秘義務: このカウンセリング面談の内容は、許可がない限り、会社側はもちろん、契約主体の社労士法人にさえ漏れることはありません。

    2回のカウンセリングは、 純粋に被害者の心の回復、トラウマの軽減、情緒的サポートのみを目的とします。

2次対応以降は、顧問社労士による企業側フォロー(ガバナンス機能)

一方で、企業としての対応(調査、処分、再発防止)については、別の社労士が担当します。

  • 役割: 会社側の代理人としてではなく、公正な第三者専門家として、法的に正しい調査手順や処分の量定についてアドバイスを行います。

  • 利益相反の回避: カウンセラーが被害者の「心」を守り、社労士が企業の「法と秩序」を守ります。
    この両輪が独立して動くことで、被害者は安心してケアを受けられ、企業はコンプライアンス違反のリスクを回避できます。

 

お問合せ先

ご興味がございましたら、お問合せ下さい。
従業員様の人数に合わせたお見積りを致します。

電話番号 :0258-30-1520
ノア社会保険労務士保人

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