採用リスクを軽減するための試用期間

採用リスクを軽減するための試用期間の設定とその運用

 新年度を迎え、新卒者や中途社員(以下、「新入社員」という)が入社された企業も多いかと思います。選考試験を経て入社してきた新入社員ですが、実際に配属したところ、会社が期待していたパフォーマンスを発揮できないということがあります。そこで、今回は採用時に設けることのある試用期間の設定の留意点と、その運用上のポイントについてとり上げましょう。

[1]試用期間の法的な位置づけ

 そもそも試用期間とは、今後、当社の従業員として中長期的にふさわしい人材であるか、適格性を判断するための期間になります。

 試用期間中に適格性に欠けるとして、会社が一方的に従業員を本採用しないことを決めて通知することは、一般的には解雇(留保されていた解約権の行使)の扱いとなりますが、長らく働いている通常の従業員を解雇することに比べ、広く認められると考えられています。ただし、試用期間中であっても解雇の理由は合理的なものでなければならず、能力面や行動面などの適格性に欠ける部分を具体的に示した上で、教育や指導を行い、能力の向上や勤務態度の改善を目指す必要があります。なお、試用期間中であって解雇予告や解雇予告手当の支払いが必要ですが、雇い入れから14日以内のときは不要とされています。

[2]試用期間の長さ

 試用期間の長さは一般的に3ヶ月から6ヶ月程度で定められていることが多くありますが、長さについて法律上の規定はありません。但し、試用期間中の従業員の身分は不安定なものとなるため、極端に長い期間を設定した場合には裁判等において無効とされる危険性があります。

[3]試用期間の延長

 勤怠不良等の理由で出勤日数が少なく、入社当初に設定した試用期間では、本採用の可否が判断できないケースも想定されます。このような場合の選択肢として、試用期間延長が考えられます。その際、対象となる従業員に試用期間を延長する旨および延長する期間を伝えると共に、会社が従業員として期待する業務水準等を明確にしておくことが延長後に本採用可否を判断する際のポイントになります。

[4]就業規則へ規定すべき事項

 以上のように試用期間の設定と運用には多くの留意点がありますが、この前提として試用期間に関する事項を就業規則に規定しておく必要があります。その事項は、前述したことも含め、以下のようなものになります。

  1. 試用期間の目的
  2. 試用期間の長さ
  3. 試用期間中の賃金やその他の労働条件
  4. 本採用しない場合の基準
  5. 試用期間の延長に関する事項
  6. 勤続年数の算定にかかる試用期間の取扱い

 就業規則にこれらの事項が定められていることを確認するとともに、採用時には試用期間があり、従業員としての適格性を判断している旨を新入社員に説明しておくことが必要になるでしょう。

 自社に適した人材を採用し、よりよい組織風土を築いていくためには、採用時に人材を見極めるようにする一方で、試用期間を利用し、採用時には判断ができなかった点についても確認しておくことが望まれます。実際の試用期間の運用においては、知らないうちに試用期間が経過していたということもあるため、試用期間が終了する前に直属の上司から従業員の勤務態度等を確認するといった運用についても再度、チェックしておきましょう。



※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。